本当のお別れ

出発日の朝もばたばた。計画が上手くプランされていなかった事を反省しても仕方が無い。荷物がなかなかまとまらなくて大変だった。手荷物のバックパックにはこれからの長旅のために買い溜めした本が重すぎる。読みたいのだから我慢。

今まで演劇の分野でとにかく成功したいと言う野心しか無かった僕は演劇の専門書、演劇人によるエッセイ、戯曲しか読んでいなかったことに気付く。わりと若い年齢で大学の助教授になった分、知識を読む事によって補いたかったのだろう。そんな僕は小説とかを沢山読みふけった事はしばらくなかった。今回の旅では、あるきっかけで演劇以外の本をいっぱい買って読む事にした。

携帯電話も家の電話もネットも無くなった家にいては誰とも連絡がとることが出来ない。最後に大学のオフィスに行き、電話とメールをする。10時にお別れを言いに来る人が集まってきた。この時まで何度も延期していた本当のお別れだった。つながりを感じた人達との別れは辛い。

ボストン空港まで友達のドムがおくってくれた。ドムは出会った日から今日まで本当によくしてくれた。空港に早く着き過ぎたので、フィッシュサンドイッチを食べて時間をつぶす。独りぼっちなのをまぎらわすために「オリガ・モリソヴナの反語法」の世界にハマる。志摩とカーチャが二人で過去の出来事を次々に解明していく所で、その経緯にどきどきする。

眠る時間以外はこの本を読みふけり、すぐにM子先生の居るマートルビーチに着いてしまった。セーラムの事はちょっと忘れていられそうだ。

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