ほりぐち農園

授業中に汚いままのスニーカーに目がとまった。ほりぐち農園の土がいっぱいついたままで、そんな土着菌は検疫に引っかかる事もなくそのまま思い出ととも何千キロも離れた所に持ってきてしまった。

ほりぐち農園に出会えて本当に良かった。

たった2日間で僕がその全てを理解したとは言えないが、シンプルで飾りのない「生き方」には奥の深さがあるように思えた。生活の基礎がしっかりしていて、理想で考えている事を完全に体で実行している。会話をする中、上手に言葉でも表現できる。何事に対しても納得して行動している。そんな「生き方」に憧れてしまった。

ジャガイモの種植えを手伝わせてもらって、「生き方」について考えながら黙々と作業をした。時より気付く土の匂いや、汚れた手、自然の光景に純粋な美しさを感じる。もちろん毎日、作業をしていたら大変なことが沢山あるだろう。たった一日体験しただけで、農業の良さや面白さや難しさの深さがわかるはずが無いが、もっと理解してみたいと思った。憧れででもいいから、しばらく農業をやってみるのも幸せではないかと思った。そんな「生き方」の中で自分が自分のために成長できるのではないかと感じた。

農場で取れた食材を主にした食事をとったり、生ごみを土に返したり、近所の農家の人が手伝いに来たり、お茶やお菓子を持ってきておしゃべりをしたり、子供が外で遊んでいたり、動物の臭いが気にならなかったり、畑道で子供がおしっこをしたり、動物の声や機会の音が響いていたりして、人間と自然がつながっているように見えた。

僕の今の生活には自分の中で満足できないものがある。今まで13年間目標にしてきた演劇専門の大学教授になる事が叶ってしまったが、ここで自分のベースを築くことに抵抗を感じた。僕には家族がここにいないからだ。今まで一人でアメリカで生活してきたとは言わないが、実際にそばにいる家族の大事さが身にしみてやっと解った。いくら仕事で充実して満足していても、それだけでは本当に幸せにはなれず、家族の温かさを感じたいと思った。

自分はやりたい仕事をしながら、幸せな家族を持つ事の両方が出来るのだろうか?今まであまりにも片方に寄っていたので、無かった方に余計に魅力を感じているのかも知れない。だが、どちらかの片方が無い人生では納得して生きて行けないと思う。

場所も重要だ。アメリカは嫌な事が多いが、それを仕事のために我慢してきた。よく人が言うように日本を離れると余計に恋しくなるものだ。これも、たまに日本に帰るだけで良いと言い聞かせてきた。日本食がやはり一番良い。これも、出来るだけ日本の物を手に入れて食べることで満足しようとしていた。しかし、日本でできるような生活をアメリカでしようとするのには限度があった。

やりたい仕事と家族と住みたい場所の全部を一緒に手に入れようとするのは非常に難しいと最近学んだ。それを一度に出来る人達は数少なく、とても幸せだろう。

ほりぐち農園では全てのバランスが取れていた。真似をする事は多分出来ないが、理想の「生き方」の一つだとつくづく思った。そんな「生き方」に触れる事ができて、自分の足りなかったものを考えさせてくれて、本当にありがたかった。

自分のために自分の「生き方」を見つけていくことがこれからの僕の人生の課題だ。

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