カーテンコール

成績を出し、実際的には大学の先生としての仕事が終わってしまった。今日は最後の全体会議があり、ついにカーテンコールに辿り着いてしまった。

椅子として使っていたバランスボールの空気を抜いたり、専門書を箱に詰めたり、飾り物を壁から取り外したり、書類を捨てたりしてオフィスの片付けを始める。

書類が散らばっていない机や空の本棚はまるで自分の存在が無かったのかのように、2年前にこの場所に初登場した時の状態に戻った。あの時オフィスのドアに自分の名前が書いてあるのがとても嬉しかったのを覚えている。30年も40年も居る人もいれば、僕のように一瞬だけの人もいる。早かったなと改めて思った。本当はやり残したことがあり過ぎて、そんな事を考えてはいけないと自分に言い聞かせる。

この13年間場所を6回転々してきた。今度の異動が最後になるのだろうか...そんな事は予測も出来ない。だって助教授になった時はこの大学で定年退職するまでやってもいいと思っていたのだから。

打ち上げ花火のようなここ4ヶ月だった。これからは庭でやる線香花火のような淡々とした人生になるのだろうか。淡々の意味の一つに「あっさりしてこだわりがないさま」とあるが、こだわらないで生きる事はこれからもきっと出来ない。安定感が欲しくないわけでは無いが、あまり変化もないとつまらない。バランスのとれた生き方ってこの世に存在するのだろうか。

カーテンコールが一つ終った。時間は容赦なく過ぎて行く...

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