島人の「海空」

肥前町向島へは星賀港から連絡船で10分程。人口41人の島。その中の1人が小学生さん。先生一人、生徒一人。そんな日本一(世界一?)小さな学校に行ってきた。お店もない。食堂も。自動販売機が一個だけ。
島では時がゆっくっりと静かにながれていた。騒音もない。穏やかで奇麗な海が包んでくれている安心感があった。

早速、学校へ行き、自己紹介などをしてから、すこしづつ仲良くなっていき、島を散歩したり、丘の上の灯台に行ったりして、健やかな気分になった。ゆったりとした時のながれが贅沢にも感じれた。放課後は僕が現在、苦戦しなが書いている途中の劇の脚本を読んでもらいました。色々とアイデアをもらった。新たなインスピレーションをもらった。物語についてクリエイティブな話し合いができるのを幸せに感じた。

夜は待ちにまった民宿での会食。海の幸を堪能。漁師をやっている人達がほとんどの島では、夜は早い。シンプルなライフスタイルがこの場所にはあるのだと思った。

翌朝。午前中いっぱい演劇の授業をさせてもらった。あんまり演劇の経験が無い人が多かったけど、その場の雰囲気がとても良くて、何をやっても受け入れてくれるよな温かい感じがした。それって一番大事なことであり、相手が受け入れてくれるからこそ、表現をすることに抵抗がなくなる。あくまで自然な形で反応することができる。

最終授業は弓削田さんによる音楽の授業。「海空」の合唱。完成にはちょと遠かったけど、この歌をこの場所で歌えたことが何よりも嬉しかった。この場所には「思い出」がいっぱいいっぱい詰まっている。そんな目には見えないものを感じながら歌うことができた。この場所を大切に思いながら卒業をして行った人達の笑顔や泣き顔を想像した。

歌が耳に残ったまま、連絡船の乗り場まで向う。現実に戻らないといけない言う理由から帰りたくないと思うのでは無くて、人や場所から感じられる純粋な美しさから離れたくないと思った。

しかし、船は定刻に出る。現実はもうそこまで追っかけてきている。


だんだん離れて行く中、お互いに手をずっと振り続けた。また「海空」を口ずさむ。

「ありがとう 思い出 あふれる この場所 また いつの日にか 会いに来るから...」
海空(作詞:向島の生徒さんたち、作曲:弓削田健介)

泣きそうになった。けど、その瞬間、秋山くん達がこの島を離れていく時の姿を想像した。号泣するだろうと思った。それは悲しさとか寂しさとか嬉しさが入り交じった感情になるだろう。たった2日間しかいなかった僕は泣いてなんかいけないと思った。

楽しかった。良かった。

向島と言う場所だけじゃなく、秋山くんや弓削ちゃんや理恵ちゃんやなるみさんに出会えたこと、たった1人の生徒さんと一緒に活動したこと、「海空」を歌ったことなどを改めて感謝するばかりだ。

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